2014年10月1日水曜日

世界最新鋭の管理型一般廃棄物埋立て処分ゼロシステム:ゼロエミッションの実現

                                                                                                 
  目 次
1. 一般廃棄物処理処分の最新技術と霧島市の対応
2. 霧島市の最終処分場設備概要
3. 霧島市の最終処分場見学
4. 鹿児島県の産廃処分のありかたに関する提言
  提言- 鹿児島県は「管理型産廃の埋立て処分ゼロ」を目指せ
  提言-② 薩摩川内市の管理型産廃最終処分場計画の問題点と提言
  提言-③ 超巨大屋根付きであるがゆえの薩摩川内最終処分場の危険性
 
 20147月、霧島市で処分容量13,700㎥の一般廃棄物管理型最終処分場が稼働を開始しましたので、 919日に同最終処分場を個人的に見学させて頂きました。霧島市が導入した廃棄物の最終処分システムを、今回の見学結果とパンフレットの内容を引用させて頂きご紹介すると共に、この施設の運用方法に関して私見を述べさせて頂きます。更に廃棄物の最終処分の最新技術の現状をご紹介して、鹿児島県の管理型産廃最終処分のあり方につきましても私見を述べまさせて頂きます。

1.
一般廃棄物処理処分の最新技術と霧島市の対応
 霧島市はガス化溶融炉を保有しており、従来から埋立てが必用な廃棄物はこの炉から発生する飛灰だけでした。溶融炉で生産された溶融固化物は建設資材や路盤材として販売しています。飛灰とは溶融炉の排気塔の手前にある集塵機で捕集したダストのことです。人口13万人の霧島市における、この飛灰の年間発生量は約2,000トンで、無害化処理した固化物として従来宮崎県の民間の最終処分場に持ち込んでいました。
 近年この飛灰を有効活用する山元還元というシステムが開発されて、実用化されています。霧島市はこのシステムを活用することになり、大牟田市の三池精練(株)に納入することになりました。この山元還元システムは国の補助金を受けて早稲田大学と地元企業などの長年の共同研究や実証実験の結果開発された新システムで、実用化されて間がないために、需給に不安定な要素があると判断して今回の最終処分場が建設されました。従って、この山元還元システムが安定化して全ての飛灰がここに供給されるようになれば、処分場の運用次第で「埋め立て処分物ゼロの霧島市」が実現可能になります。当然、二基目以降の最終処分場の建設は不要になります。世界最新鋭のシステムだと思います。政府の補助金を活用した関係上、稼働後の政府の査察をクリアーする必要がありますが、その後を見据えて運用計画を策定すべきです。現在はとりあえず稼働を開始した直後ということもあり、三池製錬(株)と半々づつ持ち込んでいるとのことでした。
 ちなみに、今回稼働を開始した最終処分場は1㎥(最大約0.8トン分)に約10万円、すなわち1トン分に約12万円の建設コストをかけています。山元還元の引き取り費用は1トンあたり約4万円ということです。山元還元が存続するかぎり、二基目の一般廃棄物最終処分場の建設は不要なのです。
  
当該最終処分場は底面80cm、側面60cmの鉄筋コンクリート製です。しかし、コンクリートは50年で1cm劣化します。壁の両側から劣化すると仮定すると、(60/2)cm×50/cm1,500年後には側壁が劣化して機能しなくなります。廃棄物を埋めた場合、これらが外界にさらされるかもしれないのです。有害物質を地中に埋めてはいけません。
 当該施設は、魚の養殖場あるいは体育系アリーナなどの方法で有効活用するなど、市民への便宜供与や霧島市の財政健全化に役立てればいいのです。飛灰固化物の納入先にトラブルが発生した場合は、いつでも「最終処分場」ではなく、「一時的な仮置き場(法的には中間貯蔵施設」と呼ぶ)」として使えます。

   話は横に逸れますが、産業廃棄物の分野でもこの技術、システムを活用して埋立て処分物ゼロが可能です。原発は埋立て処分物ゼロの技術を確立してから利用の是非を議論すべきです。必ず可能なはずです。これは原発の採算性を議論する不可欠な前提条件で、再稼働どころの話ではありません。戦後、製鉄技術をはじめ多くのことを、原発廃止を決めたドイツに学んで発展した日本です。大変悔しいですが放射性廃棄物の埋立てゼロの技術を日本独自で確立するまでは原発問題もドイツに見習うべきです。
 薩摩川内市は毎年10億円レベルの原発補助金、付随の税収などがあるようですが居住者は急速に減少しています。賑やかで活力がある美しい霧島市を未来永劫守りたいと思っています。 

2. 霧島市の最終処分場設備概要
  パンフレットより引用:             写真や表はクリックすると拡大し鮮明になります。 


 

現在の法律では、管理型最終処分場は厚さ1.5mm以上の遮水シート(ビニールシートなど)を2枚以上敷くように定められています。民間企業や鹿児島県はこの法律を守ればいいという方針で設備を建設しています。霧島市は、これでは安全が確保できないと考えて、自分たちの身を守るために巨費を投じて60cmとか80cmの厚さの鉄筋コンクリート製の枡にしました。
 おかしなことに、鉄筋コンクリート製で水漏れの可能性が皆無の処分場でも厚さ1.5mm以上の遮水シートを2枚以上敷く必要があるのです。又、排水を出さない処分場周辺に地下水をサンプリングする井戸を設置して定期的に成分検査をすることも義務付けられています。悪法のために不要な出費が必用なのです。早期の法律改訂が必用です。
 

           底盤は直径1.5mのコンクリート柱576本で支えられている。 
 



霧島市の式根清掃センターに持込まれる一般廃棄物(家庭ゴミなど)の処理工程をご説明します。
大型で複雑な化学プラントで、高度の操業技術が必用です。最終工程の排気塔の手前の集塵機で捕集された飛灰(ダスト)も山元還元システムで有効活用される方法を全面的にとれば、埋め立て処分が必要な廃棄物はゼロになります。      



 
 

 
  3. 霧島市の最終処分場見学
 見学に際しましては、担当の方々による専門的で詳細なご説明を頂きました。見学時に撮影した動画です。
 
 

 

4. 鹿児島県の産廃処分のありかたに関する提言
提言- 

鹿児島県は「管理型産廃の埋立て処分ゼロ」を目指せ

鹿児島県初の公共関与の産業廃棄物処分場計画に、薩摩川内市の処分場建設地域の皆様が激しく反対しておられます。甲子園球場とほぼ同じような面積の山間部の窪地に、約六十万立方メートルの廃棄物を十五年間に亘って埋め立てる計画です。
 国内には廃棄物の管理型処分場が新設と廃止(野ざらし)を繰り返しながら常時稼働中のものが約千ケ所あり、これらの排水に有害成分が混入するなどで、多くの公害事件を起こしてきました。
 一方、日本では廃棄物を中間処理したり、最終処分する技術が目覚ましく進歩しています。国の資金援助を受けた民間企業と早稲田大学との共同研究で、「山元還元」という「埋立て廃棄物ゼロ」を可能にするシステムが開発され、実用化されています。幸い、この新技術は九州の二つの会社で事業化され、すでに県内の数か所の地方自治体がこれを活用するなど、一般廃棄物の分野では「埋立て廃棄物ゼロ」を実現しつつあります。
 企業が排出する産業廃棄物の分野でも、多くの地方自治体が採用している溶融処理システムや、民間企業の廃棄物中間処理技術を活用するなど、鹿児島県の総合的な廃棄物処理システムを構築して、「埋立て廃棄物ゼロ」を早期に実現すべきです。

  
国内の山元還元の工程を所有する会社の例(前田調べ):
  光和精鉱(株)・北九州市
    日置市クリーンリサイクルセンター(300T/年)、千葉県流山市、八街
    市、埼玉県所沢市などが飛灰を納入。
  三池精練(株)・大牟田市
    姶良西部衛生処理組合(700~800T/年)などが飛灰を納入。
  三菱マテリアル()直島製錬所・香川県直島町
    香川県さぬき市などの飛灰、土庄町豊島の不法投棄物などを納入。
  中央電気工業()・茨城県鹿嶋市
    茨城県鹿嶋市、石岡市などの飛灰を納入。
  ㈱MTR・青森県八戸市(三井金属()と太平洋金属()の合同事業)  
    八戸市などの飛灰を納入。ホタテ貝殻の処理との組合せ技術が特徴。

 以下は参考資料です:
  非鉄金属製錬業界のリサイクル原料・廃棄物処理技術に関するデータ
                     (経済産業省のホームページより引用)

 非鉄金属製錬業のリサイクル技術・廃棄物処理技術を、事業として実施しているもの、国のプロジェクト等で研究開発に取り組んだもの或いは現在研究開発中のものについてとりまとめた。
 これらの処理技術は、各社のホームページ、学会誌、公的機関の公開情報から抽出した。
 次に示すNo.1No.14 までは事業として実施しており、(1)企業名、工場・事業所名、(2)処理対象物をデータシートにまとめた。

No.1
小名浜製錬の反射炉によるシュレッダーダスト処理
No.2
小坂製錬の流動床炉によるシュレッダーダスト処理
No.3
東邦亜鉛小名浜の電熱炉による製鋼ダスト処理
No.4
三池製錬のMF炉による製鋼ダスト処理
No.5
細倉製錬の鉛バッテリー処理
No.6
神岡鉱業鉛リサイクル工場の鉛バッテリー処理
No.7
野村興産イトムカの水銀含有廃棄物処理
No.8
中外鉱業の貴金属含有物処理
No.9
日本ピージーエムの廃触媒処理
No.10
日鉱環境の廃棄物処理
No.11
苫小牧ケミカルの廃棄物処理
No.12
日鉱三日市リサイクルのガス化溶融炉による廃棄物処理
No.13
日鉱敦賀リサイクルの廃棄物処理
No.14
光和精鉱戸畑製造所の廃棄物処理
 下記のNo.20No.31 は国のプロジェクト等で研究開発に取り組んだもの或いは現在研究開発中のもの。 (筆者註:No.15からNo.19迄が抜けている理由は不明です)
No.20
エネルギー使用合理化鉱山等利用技術開発
No.21
非鉄金属系素材リサイクル促進技術研究開発
No.22
産業汚泥に含まれる有価金属資源化技術の開発
No.23
省エネルギー型金属ダスト回生技術の開発
No.24
エネルギー使用合理化技術開発(飛灰無害化技術開発)
No.25
廃家電の非鉄金属等複合部材及びプラスチックのマテリアルリサイクル技 
    術、断熱材ウレタンのサーマルリサイクル技術の開発
No.26
廃家電、廃自動車の非鉄金属回収に伴う燃焼排ガス中のハロゲン最適処
    理技術の開発
No.27
廃家電の非鉄金属回収に伴う高温・低温焼却技術、燃焼排ガスの湿式処 
    技術の開発
No.28
廃家電(廃プリント配線基板主体)の非鉄金属回収技術及び高効率前処理 
    技術の開発
No.29
非鉄金属の同時分離・マテリアルリサイクル技術開発
No.30
電炉技術を用いた鉄及びプラスチックの複合リサイクル技術開発
No.31
エネルギー使用合理化製錬/リサイクルハイブリッドシステムの開発
                
             (前田は山元還元の国内外の実施例を調査中、求む情報)

「山元還元」のご説明と前田の願い:
 「山元還元」とは、廃棄物を処理する溶融炉などの集塵機で回収された飛灰に、2~12%含まれている鉛、カドミウム、亜鉛、銅などの非鉄金属を精錬して回収すること。
 通常、一般廃棄物はリサイクル品、瓦礫類などを除いて溶融処理され、路盤材などに活用される。
 近来、その工程で発生する飛灰だけが埋立て処分されていたが、これも有効活用する技術が開発され、ゼロエミッションシステムが完成した。
 産業廃棄物は可燃成分が少なくて、溶融処理の燃料費が高くつくことなど、採算優先で埋立て処分されてきた。
 納入単価が高い「特別管理型」の医療廃棄物などを手始めに、溶融処理を採用する先進的な民間企業が出てきた。
 筆者は、エネルギー効率が極めて悪い発電までやれるほど(又はやれなくても)、可燃成分が多い一般廃棄物と産業廃棄物との総合的な管理システムを構築して、鹿児島県、日本全体のゼロエミッションシステムを構築することを提案している。

                                  この項、20111010日記

 提言-② 
薩摩川内市の管理型産廃最終処分場計画の問題点と提言
1.はじめに
  
鹿児島県には公共関与の産業廃棄物管理型最終処分場が一ヶ所もなく、現在、薩摩川内市への設置が推進されています。川内原子力発電所の原子炉が廃炉になったあと、放射能を帯びた解体廃棄物の管理型産業廃棄物はどこにいくのでしょうか。
  
長い間、日本で公共関与の産業廃棄物管理型最終処分場がない県は山梨県、高知県、栃木県、和歌山県、鳥取県、鹿児島県でした。山梨県は約15年に亘る反対運動を押し切って20095月、初の処分場が旧明野村で稼働開始しました。操業開始して数か月で厚さ1.5mmの遮水シート(TPO:サーモプラスティックポリオレフィン製)の接合部が50か所以上はがれました。2010102日に漏水検知システムが作動したため、埋立て物を約5m掘り起こして調査したところ、原因は、施工時に重機の圧力がかかり、遮水シートが破損していたことでした。水質汚染の兆候があるようです。現在まで約1年稼働を停止したままです。すでに2年間で50億円近い赤字が発生し、増大しつつあります。処分場への持込み量が少ないので、受け入れ単価を約3万円/トンから約2万円/トンに引き下げてなんとか事業を続けようとしていますが、赤字増大を防ぐために早く処分場を廃止すべきとの意見もあります。明野処分場建設に伴って2003年と2004年に県が実施したアンケート調査で、処分場が必要と回答したのは県内排出業者869社中わずか10社のみの1.1%だったのです。鹿児島県は何パーセントなのでしょうか。廃棄物のリサイクルなどの技術の進歩で持込み量が「想定外」となり、大規模な投資が無駄になる恐れはないのでしょうか。
   
鈴木嘉彦山梨大学工学部長を委員長とする旧明野村の検討委員会では「立地とシステムは危険だ」との結論で、村長もこれを尊重して立地に反対していました。市町村合併で旧明野村が北杜市となり、県は方針を押し通したのです。旧明野村民は泣くに泣けないことでしょう。山梨県知事は次期最終処分場(境川)では、産業廃棄物を受入れない方針を発表しました。痛い目にあってたどり着いた結論です。廃棄物処理法第3条で、産業廃棄物の処理責任は事業者にあります。企業誘致のために多額の赤字を出す処分場を税金を使って提供する必要はないという考え方です。ましてや、近年「山元還元方式」の採用などで、埋め立て廃棄物ゼロのシステムが開発され、実用化されつつあります。 
   
高知県では2011101日に初の処分場が稼働を開始しました。処分場の側壁は高さ約10mの現場施工の鉄筋コンクリートで、厚さが上部500mm下部2,200mmの台形で、クローズド式の最新型です。
   
鹿児島県は、絶対に第二の山梨県になってはいけませんが、現在の計画ではそうなりそうです。専門家による検討委員会の設置もないまま、事が進められました。県の「専門委員会」は指導要綱に基づいて設置されたもので、機能(任務と能力)が山梨県の検討委員会とは全く異質のものです。法的には、廃棄物処分場に関する県の計画は設置予定地域の住民や、関係市町村の意見を聞くだけで(又は聞かなくても)方針どおり進めることができます。それらがいくら反対しても、協定締結を拒否してもごり押しができるように決められています。指導要綱すら法的には守る義務はありません。
   2011
1014日、鹿児島県の処分場計画に反対する地域住民の三団体が合同で県環境整備公社を相手取って鹿児島地裁に計画挿し止めを求めて仮処分を申請しました。裁判官は「厚さ1.5mmの遮水シートを許し、多数の事故を惹起してきた悪法」に照らして判決をくだす可能性があります。悲劇の回避は県議会の動きや伊藤県知事の判断力と良心にかかります。山梨県と同様に、無謀な計画をごり押しすれば大きな失敗を繰り返すことになります。
   
国内に最終処分された管理型産業廃棄物は少なくとも約10億トンにのぼります。最終処分場の有害成分の漏えいや悪臭発生が公害を惹起し、継続的に2,000件程度(筆者推定)の訴訟事件になっています。
   
法律で定められた厚さ1.5mm以上の遮水シートの劣化や破損で有害物質が流出して水質汚染などを引き起こしています。遮水シートが一重ではダメなので、1998年に二重以上にするよう法律が改定されました。それでも問題が多発するため、鹿児島県では厚さ5001,700mmの鉄筋コンクリートの枡方式を採用した自治体(姶良郡西部衛生処理組合:下の2枚の写真・霧島市が参考にした)や、産廃分野では上述の高知県など国内トップレベルの優れたシステムを導入した例が出てきました。
   
幸い、鹿児島県は今まで廃棄物による汚染とはほとんど無縁の生活環境と美しい自然を維持してきました。私たちは子々孫々に迷惑をかけるような過ちを決して犯してはなりません。

最新型の管理型廃棄物最終処分場(鹿児島県姶良市)


















2.鹿児島県の現計画の問題点 

下図は鹿児島県が公表した、薩摩川内市に建設予定の処分場の構造概略図です。
 
二重の遮水シートによる遮水構造



      
設備概要:
 埋立容量 60 万㎥ 程度(東西176m、南北327m、深さ30mの船底型)
 埋立面積 36,800 ㎡(甲子園球場全体とほぼ同じ面積・全面屋根付き)
 埋立て層厚:最大約30m
 供用年数:15


冠嶽の中腹に位置する処分場建設予定地の地盤は水を通しやすい柱状節理の溶岩で、湧水が多い。窪地の上部直近に大きな湧水か所があり、窪地内の湧水は2か所以上、浸出か所は無数確認されている。排水層(砕石、面状排水材)で湧水や浸出水を抜く構造になっているが、経年で目詰まりが発生し、充分に機能しなくなると考えられる。目詰まりしない濾過層は存在しない。湧水や浸出水の圧力等で側壁や底部の遮水シートがが破損すると浸水する。当然この水の一部は浸出水として回収、処理されるが逆に破損部分から漏れ出た有害成分を含んだ水は土地を汚し、河川に注ぐ。
    
遮水シートが水圧で破損する原理を簡単に説明する。埋立て物の層厚が30mとなり、側壁の排水層が目詰まりをおこし、側壁にそって30mの水柱構造ができたとする。側壁の底部には約3Kg/㎠の水圧がかかる。この圧力は乗用車のタイヤの空気圧よりはるかに高い。仮にタイヤが1.5mmのビニールシートでできていたとすると、簡単に破裂することが想像できよう。
  
窪地内(廃棄物処分予定部分)の湧水や地下水は排水管で集水して地下水ピットを経由して放流するとしているが、直接地下に浸透して流下し、全量を集水することはできない。又、水質に問題があれば浸出水処理設備で処理する計画とするなど、当初から浸出水の漏れを想定している。遮水シートから一滴も漏れてはならないのだが、例えば厚さ1.5mmのビニールシートは有害成分を含んだ浸出水を透水係数1×1012cm/秒程度の速度で下部の地盤に通す。
厚さ200mmのコンクリートを打つ構造(少なくとも底部は)だが、内容物の保護の役割は長期的には期待できない。広い面積の岩盤は時間経過と共に変形したり不等沈下するため、直結した薄いコンクリート構造体はシール構造と共に追従できず破損するだろう。紫尾山、金峰山は14年で1cmの割合で隆起している。ここも同様だろう。
   
エラス(伸縮吸収材)を入れると強度や長期間の気密性に問題が発生する。厚さ300mmの砕石の排水層に張り付けられた、薄いコンクリート壁が地震で剥げ落ちることは容易に予測できる。「法律に基づいた施工基準を守っている」との声がすぐ聞こえてきそうだ。国内1級の「出水活断層」や、2Km離れた所に「確実度」の活断層がある。活断層の存在は法的に処分場の立地を制約する事項だがこれも大丈夫と判断された。地質の専門家は危険性を指摘している。東西176m、南北327m、深さ30mの巨大で極めて脆弱な容器が、波打って揺さぶる地震にどの程度まで耐えうるだろうか。震度5だろうか、震度7だろうか。
   
「透水しない強固な岩盤の窪地だから遮水が容易で建設費が安くて安全だろう」との大きな勘違いが本計画の基本にあるのではないか。大量に漏れなければいいのではなく、一滴も漏れてはいけないのである。全く逆に、危険で設備投資も高くなる場所である。仮に、厚さ1,500mm程度の鉄筋コンクリート枡方式を採用するとしても、側面からの湧水や浸出水がある、不定形な当地では平地に設置する場合に比べて設備投資が高額となろう。最新型の処分場を、当地に建設することは、安全性、経済性の観点から極めて不合理である。
   
国内にすでに数十か所設置され、稼働している最新の管理型処分場は地震や地盤の変形、浸水の影響を受けにくい、5002,000mm程度の厚さの鉄筋コンクリート枡構造で、より安全な場所に設置されている(参考資料-1参照)。
ただ、残念ながら永久に安全な廃棄物最終処分場のシステムや場所はない。

      
参考資料-1:「絵で見るクローズドシステム処分場」・クローズドシステム処分場開発研究会編・環境新聞社刊
厚さ1.5mmの遮水シート(ビニールシートの場合)の寿命は75年(県担当者回答)と推測されている。50年と推測するメーカーもある。劣化したら機能しない。
75
年間は面積36,800(甲子園球場とほぼ同じ)の処分場に張られた厚さ1.5mmの遮水シートに地域住民の安全確保や環境保護が賭かり、劣化した後は自然放置状態となる。現在の法律はこれを許している。処分場を閉鎖(受け入れ停止)後、浸出水の水質やガス発生などが、2年間一定の基準をクリアーすれば処分場は「廃止」になり、「自然」に戻るか跡地利用される。

   
埋め立て途中又は埋め立て後に遮水シートが破損したらどのように対処するのか。現在、その方法がなく対処できずに垂れ流しになり、大きな問題を惹起している処分場が国内に多数ある。埋立層厚は30m程度とのことだが、これを掘り起こして遮水シートを補修することができるだろうか。
   
自己修復材として高分子吸収材又はGCL(ジオシンセティッククレイライナー)を使うとのことであるが、これらを含めて、現在国内で自己修復材として使われているものは単なる充填剤であり、充分な遮水効果は期待できない。名前のとおり、高分子や粘土系物質が主成分の膨張材である。
伊藤県知事は2009420日の定例記者会見で「ただ、柱状節理といって、岩盤は一枚岩ではないですから、必ず間に若干の亀裂が入りますが、それでもほとんど透水性の低い地域だろうと思います。また、この産廃施設の透水性の問題というのは、岩盤で保障するのではなくて、その上に貼る5層の膜でもって防水性を完璧に保障するのです。ですから、直接岩盤に入れ込むのではなくて、その上に5層の膜を貼って、きちんとやるわけですから。それは日本全国、900ヵ所の廃棄物施設全部そうです。」と発言した。岩盤が透水することを認めたうえで、遮水シートは皆が使っているから安全だとの発言である(発言は参考資料-2参照)。すでに国内で数十例稼動している最新式の処分場がどのようなものか、又、遮水シートは仮に健全であっても、上述のように有害成分を含んだ水を通すことを全くご存知ない。県にとって極めて重要な事業でありながら、実態調査などによる現状把握すらできていない。伊藤県知事や県関係者の大きな怠慢が指摘される。
   
5層の膜」は何を指すのか不明であるが、ある程度遮水効果があるのは遮水シートだけである。厚さ1.5mmの遮水シートではダメだから分厚い鉄筋コンクリート製に移行したのだ。旧来、最も有害成分が多い特別管理型廃棄物は厚さ30cm以上の鉄筋コンクリート枡(遮断型という)で管理するよう定められているが、近年、管理型廃棄物の分野でもこれを上回る処分場の機能が確保されつつある。 
   
最新鋭設備の多くは地方自治体が管轄する一般廃棄物の管理型処分場であるが高知県は産廃の分野で採用した。これらは経済、産業最優先の古い法律を遵守するだけの施設では市民の安全が守れないので、設備投資は高額になるが、より安全なシステムを開発し導入した。自分たちの安全と自然環境を守るためにだ。多くの公害事件を惹起してきた、厚さ1.5mmの遮水シートに頼る極めて危険な従来型の施設での対処が産業廃棄物だけに許される根拠はない。
  
すでに国内で数十か所に最新鋭設備が建設され、稼働している。是非、これらを参考にすべきである。立地、構造の観点から県の計画が時代遅れで、いかに危険かを認識すべきだ。

産廃の流通分野は真の経済原理が働く世界である。「マニフェストを守らせればこうなるはずだ」などという、お役人の机上の計算は全く通用しない世界だ。民間の管理型処分場の受け入れ単価には「表単価」と「裏単価」があり、お役人が耳にするのは表単価であり、裏単価はそのほぼ半額との話がある。業界の市場調査、アンケートによる意向調査などを実施して実態を把握すべきだ。これも、お役人がやったのでは真の姿は把握できないことを認識した上でだ。その上で、実態に即した採算性を明確にすべきである。山梨県はこの面でも失敗している。

.鹿児島県への提言
「低地の平地」に処分場の立地を変更し、最新型のコンクリート枡方式を採用すべきである。現在の計画は大きな事故を起こす可能性が極めて高い。事故を起こして大きな被害を発生させたり、その対策に巨費を費やしてはならない。このことは筆者が20042月以来、県知事はじめ県関係者に文書等で具体的に提案している。山梨県や高知県等、直近の失敗例や最新システムに学ぶべきである。
設備規模は埋め立て容量が60万㎥程度とのことであるが、県初の設備でもあり、高知県などを見習って最初のセルは10~20万㎥クラスに縮小すべきである。
その理由:  
    1
)山元還元など新技術が開発されたり、各種減量化の努力で産廃の発生量
は着実に減少傾向にある。
    2
)現行法の規定で、中間覆土は埋立て物の層の厚さ2m以下で0.5m以上と
なっている。これは、旧来の雨ざらしのオープン方式を前提として規定され
たものだ。クローズド方式では見直されるべき事項で、規定を改正すべきだ。
このような改正すべき不合理が設備条件にもあり、これらの修正で有効
容量の増大が期待できる。
   3
)失敗のリスクの軽減。(これが最大の理由である)。
現在の計画は単に現地の地形に合わせて容量を決めたと考えられる。当初から50万㎥程度を考えていたはずで、諸般の要因を考えると、これを下回ることはあっても上回ることは考えられない。
将来、鹿児島県は埋め立て廃棄物ゼロを目指すべきである。すでに県内の数か所の自治体が山元還元方式を採用するなど、大変な努力をしてこの理想的なシステムを実現しつつある。
   
又、県内の民間会社でも溶融炉を導入するなど、埋立て廃棄物ゼロを指向している。県はこれら先進の自治体、民間企業の実態を把握した上で、将来計画を策定すべきである。
  
この指針については、20075月に伊藤県知事以下県関係者に文書等で提言している。

.後記
   
稼働中の処分場の排水の水質は基準値で管理され、有害成分は基準値以下の濃度で流出して川に入り、海に注ぎ続けている。国内に埋め立てられた約10億トンの産業廃棄物は、いずれ自然放置状態になる。処分場が「廃止」になったあとは法律上誰にも管理する義務はなく、地域住民が監視することになる。日本が廃棄物による公害列島にならないよう頑張り続けることが大切である。
   
処分場に埋立てられた廃棄物は経年で「安定化」して有害成分が出なくなるという話がある。ダイオキシンや水銀などは変化しない。処分場内部に水道(みずみち)ができることによる有害成分の流出速度の急速な低下、放射能の時間減衰、動物の死体などの有機物の腐敗や発酵、一部金属類の酸化などの現象は理解できる。これらを安定化と呼んでいるのだろうか。多くの学者がいわゆる「埋立て物の安定化」などはあり得ないと明言しているし、論を待たない。 
   
当建設予定地は、徐福伝説で有名な 霊山冠嶽の中腹に位置し、鎮国寺のすぐ近くにある。徐福はもとより、不老長寿の薬草を求めて徐福をここに遣わした秦の始皇帝はなんと言うだろうか。
 冠嶽の麓には「冠嶽温泉」もある。この温泉こそ冠嶽に降った雨水が柱状節理から地下深く浸透し、各種成分を溶かし込んだ熱水となったものだろう。温泉脈があるのは、多くの薬草をはじめ、珍しくて不思議な植物が多数生育していることと無関係ではなかろう。 地域住民の皆様の安全と自然環境はもとより、霊山冠嶽を守るべきだ。鹿児島県初の管理型産廃処分場の建設から、大きな失敗を犯してはならない。
 計画推進者に祟りがないことを祈ると同時に、早く誤りに気づき、計画が撤回されることを願う。まだ遅くはない。
  
鹿児島県は過去に公共関与の管理型最終処分場の建設予定地として、旧喜入町、旧鹿屋市、旧国分市上の段、旧国分市川内を発表したが、これらのすべてが山間部で予定地区や下流域の住民の強烈な反対運動で計画が頓挫した。今回の薩摩川内市の計画は、クローズド式で浸出水を放流しないという点が改善されたが、最重要な「安全」を保障するには悪い要因が多すぎる。過去の頓挫の反省がない。国内で最後の県であり、少なくとも最新鋭のシステムでなければならない。
   
攻めることより引き返すことに、より大きな勇気が必要だが、県は蛮勇を振るって引き返すべきだ。国は原発ですら引き返すと言っている。今からでも決して遅くはない。
   
事業は理に適い、法に適い、情に敵わねばならない。現計画で適っているのは、経済、産業最優先で制定された時代遅れの法律のみである。 少なくとも、大方の県民が賛同するような計画でなければならない。

付録・戦略策定について:
 2006年から2年間を費やした当事業計画の検討体制と検討手法が適正であったか疑問を持たざるを得ない。県の関係者が自分たちが選んだ専門分野の人々の意見を聞きながら自分たちで一生懸命考え、議論しても最適な計画が策定できるとは限らない。戦略を立てるにあたって過ちを犯しにくい、科学的な検討手法がある。
 例えばKT法(ケプナー・トリゴー法)をその一つとしてご紹介する。この手法を使えば「どのような体制」で検討するのかから始まり、「どのようなシステム」を「どこに」「いつごろ」などといった基本的な戦略を大きく間違えることは避けられる。
    KT法: http://ai.skr.jp/acton/k-info/mark1/mark1-13.htm
 是非「今後の対処法はいかにあるべきか」をテーマに、KT法に限らず、科学的な検討手法を用いて戦略を立ててほしい。戦略策定の専門家は多数おられる。
 著者がなぜ「検討体制と検討手法が適正であったか」疑問を持ったのは、伊藤県知事が極めて不適当な場所と古いシステムについて「最適の場所で最新鋭の設備だ」と発言されたからだ。「最適な場所と最新鋭の設備はどうあるべきか」、科学的な戦略策定手法を使えば別の答えが出たはずだ。                       
                                     
                           この項、20111017日記
 

 
提言-
超巨大屋根付きであるがゆえの薩摩川内最終処分場の危険性

大成建設が受注した鹿児島県薩摩川内市内の屋根付き産業廃棄物処分場の完成予想図
 



       写真2011.6.25 12:00 の[すごいぞ!ニッポンのキーテク]より引用

 ここでは排水の心配の話ではなく、風や空気、修理の心配の話です。
  
日本で一番大きなクローズド式管理型廃棄物処分場は、 大分県の臼杵市清掃センターにあります。埋立面積 7,200 ㎡、埋立容量 71千㎥、埋立深さ 15mです。
 今回の薩摩川内市の計画は、埋立面積 36,800 ㎡(甲子園球場全体とほぼ同じ面積)、埋立容量60 万㎥ 程度、埋立深さ最大約30mです。従来の日本一の臼杵市の処分場に比べて、埋立面積が約5倍、埋立容量が約9倍、埋立深さが約2倍です。
 
 廃棄物が貯蔵されると、有害成分を含んだ粉じんや有害ガス、臭気が発生します。当然、これらは換気部分から室外に飛散します(対処設備不明)。
   
台風銀座と言われる鹿児島県に初めて造る処分場です。冠嶽の西側を台風が通過すると最強の暴風を受ける立地です。
 屋根の広さが世界一で、ギネスものではないかと思って調べましたが、世界一はロンドンの「O2アリーナ 」(建設費約800億円)で、これに負けています。因みに東京ドームの屋根の面積は28千㎡で当処分場はこれの1.3倍です。東京ドームは空気圧保持式で比較になりません。
 因みに単層の通常の屋根で国内最大級は奈良県の新公会堂の5400㎡で、当処分場の屋根はこれの6.8倍で、ダントツ日本一になります。
  
高さ40m前後の柱に支えられるであろう巨大な屋根、ガウディもビックリでしょう。
屋根と柱は何年持つのでしょうか。屋根は修理できそうですが、腐蝕成分に晒される柱の底部の腐蝕をどのような方法で検知し、腐蝕したらどのような方法で修理するのでしょうか。
 「百年や千年大丈夫」ではダメなのです。人類や生物が生存するであろう期間大丈夫でなければなりません。
 
なぜ、こんな巨大なものになったのでしょうか。以下は、筆者の推測です。
 「2006110日、霧島市長が旧国分市への処分場誘致を白紙撤回した。以後、県は設置計画を再検討し、200858日、薩摩川内市案を発表した。
 再検討開始時の案はオープン式だった(少なくとも旧国分市案は)が、公害問題多発など、時流でクローズド式となり、元土地保有者がオープン式の産廃処分場設置を検討したことがある当地の地形に合わせて巨大な構造になった」。
 建設業者はどんな巨大な構造物の建設案件でも無理ですとは決して言いません。
重大な落とし穴が待っているかもしれません。県は貯蔵した廃棄物は数年で「安定化」して有害成分は浸出しなくなると考えているようですが、全くの間違いです。安定化すると言う理論はありません。従来の露天方式で浸出水の有害成分の濃度が低下して排水の規制値以下に低下する原因は廃棄物中に水道(みずみち)ができるためと考えられます。有害成分は埋め立てた量だけ流出し続けるのです。従って、屋根を撤去できませんし、貯蔵廃棄物への地下水の侵入も未来永劫防ぐ必要があります。

                        この項、20111025日記
                                     以上



                 閑さや  岩にしみ入る 蝉の声」(昔)

                        芭蕉

    冠岳を拝して詠む

     前句:   閑さや  岩にしみ入る タミの声」(建設前)
    
     返句:   閑さや  岩にしみ入る ゴミの水」(稼働後)
                                
                        罵笑 

 

                                                                                                                         2014930
                                              文責:霧島市 国分川内     前田久紀

 

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