2016年6月11日土曜日

有隅先生の前田農園ご視察:2016年6月10日

 6月10日、13時過ぎから17時頃まで有隅先生の前田農園ご訪問の栄を賜りました。先生の鋭いご観察記録やご感想などを頂きましたので記録させて頂きます。

 
  1. 有隅先生のご訪問後のコメント 

   前田さん 小出さん 池田さん 「花咲爺の会」の皆さま
                                    有隅です
 昨6月10日、霧島市の前田農園を訪ねました。空前絶後とも言うべきこの冬の大凍害に対するイペーやジャカランダの被害状況をつぶさに見届けたかったこと、それにT.albaの銀葉化問題について、その実態をこの目で確かめたかったこと、にあります。
(1)これまでイペーに関し、色んな「種」や採種元(源)を異にする系統が供試されてきましたが、前田農園で見る限り、耐寒性に関する最強の「種」はT.albaであると断定し ても差し支えない、との感を深くしました(こう結論付けても、大きな誤りはありません)。今後日本でイペーの普及を進めるとして、この「種」を措いて他にない、との結論に達しました
(2)そのT.alba種内には、採種地や採種母本の違いによって、つまりその違いに基づく「系統」の違いによって、耐寒性に差が見られました。これは当然予想されたことでしたが、現実にその実態に触れて、育種の在り方に大きな方向性を得られたように感じました 
(3)前田さんは耐寒性最強の系統は、「JS121117」だとし、新しく入ってきたSão Joaquim 産の諸系統との耐寒性の強弱を今後確認したい、ということでした。その結果がどう出るか、今後の普及や育種と関連して大いに注目されるところです
(4)前田さんはこの「JS121117」を増殖しようと、枝挿しと根挿しをしておられましたが、根挿しの方が成績が良いとの見解でした。これは同感です。なお、挿木(枝挿し)は畑にいきなり挿し付ける方法でしたが、これで好成績で活着するなら、是非その手法を公開してもらいたい、と思いました(私の常識では、先ずは鹿沼土に挿し付けたくなります)
(5)そしてこの「JS121117」の苗4本を北海道に送付済みで、その耐寒性を確認したいとのことでしたが、その結果がどう 出るか、もうゾクゾクしますよね
(6)一方、T.albaにおける銀葉の発現がどんな風に行われるのか、その実態を知りたいというのも、この訪問の大きな目的の1つでした。幸いに前田農園にはいろいろなサイズ(Age)のT.albaがありましたので、比較検討をするのに大変好都合でした。
その結果;
(7)まず系統の違いによって、早くから銀葉化してくる系統と、そうでない系統のあることが、確認されました。また1つの系統内では、早くから銀葉化を始める個体とそうでない個体があること、つまり個体間差(差異)も見られました。更に1つの個体で見ると、その部位によって違いが見られました。樹木一般に共通する問題ですが、どんな巨木 でも一番若い部位はかつての双葉の部位、そして一番老化した、Ageの進んだ部位が樹冠の最外層=各枝条の末端部です。そして当に、そのような個体が見られました。今春伸びだした枝条の先端部は銀葉なのに、その下位には緑葉⇒銀葉への移行期の「まだらの葉」があり、更に最下位、つまり地際から伸びだした「ヒコバエ」の葉は、全て緑葉でした
(8)この銀葉化については、私自身隔靴掻痒のモヤモヤした思いをしていたのですが、これですっきりしました。T.albaはAgeの進行とともに、「早晩はあっても緑葉から銀葉に変わる」、ということです
(9)ジャカランダに関しても、衝撃的な事実に出会うことが出来ました 。樹高5~6mはあろうかという大きなジャカランダがモノの見事に地際まで枯下がり、そこから細々と再生しようとしていたことです。これではまったく積んでは潰える、賽の河原ですよね。
(10)このような中で、種子の給源を吟味するとこうも違うのか、という事実にも出会いました。モノはボリビアはLa Paz在住の友人に依頼した種子(標高3300m)によるものですが、小苗なのに見事な生育振りを示していました(残念ながら枯下がりはあり)。これは拙宅においても、同様でした
(11)São Joaquim のT.albaの耐寒性には、刮目すべきものがありますが、Santa Catarina州の同市その他の高冷地にジャカランダの植栽があって、その種子を供試することが出来れば、ここでも新しい道が開けそうです。ブラジルの方々に、ご協力をぜひお願いしたいところです
以上充分ではありませんが、前田農園見聞記を取り纏めました。パラナ松や朝鮮・白頭山産の松など、驚嘆すべきモノにも出会いましたが、これらは割愛いたします。前田さん、どうも有り難うございました。

2. T.albaの銀葉化の時期について (文責・前田)     
結論:
早いものは播種後1.5年で銀葉化するものが出る。
播種後2.5年ですべてが銀葉化した樹種がある。
あと半年程度で確認できるが、現在前田農園で生育中のT.alba
全数が播種後3年で銀葉化すると予測する。
①2012
1117日播種(池田邸前・「JS121117」)
2015
年春には約30本全部が完全に銀葉化した。
以下は2016610日現在の各樹種の状態:
②2013
127日播種(サンタカンジダ・「SC131207」)
30本中1×4本と0.7m×2本が銀葉化、他も続くと思われる。
③2013
129日播種(カブラル地区・「C131209」)
25本中1.5m×8本と0.5m×1本が銀葉化、他も続くと思われる。
④2014
5月播種(サンタカンジダ・「SC1405××」その1 発芽後1ヶ月で畑に移稙。
10
本中全部が銀葉化、樹高2.02.5
⑤2014
5月播種(サンタカンジダ・「SC1405××」その2  畑に移植する場所がなく、ポットのまま1年管理後、畑に移植。
30本中1×5本と0.7m×2本が銀葉化。に比べて銀葉化が遅い。
⑥2015
218日播種(サンジョアキンⅡ・「SJⅡ150218」)
40本中1.5×2本と1×1本が銀葉化。
2015年春播種(サンジョアキンⅠ・「SJⅠ15××××」・S様より苗を10本入手)
10本中銀葉化ゼロ

追記:
後日の有隅先生からの宿題

その1.
Date: 2016/6/12, Sun 14:03
Subject: イペーとジャカランダのデータ

前田さん 
     有隅です 

皆さんに華々しく取り上げられるのは、いささか面映ゆいのですが、まぁそれは良しとすることにして、とにかく今回の現地観察はとても良い勉強になりました。目から鱗の思いも致しました。それで折角の機会ですから(マイナス9℃余りは、常時にとはいかない、と思いますので)、この際簡単で結構ですのでデータを取って、後々まで残るようにして下さいませんか。お願い致します。

<種類別、系統別の「枯下がり皆無個体の比率」や「枯死株率」を記録しておいて下さると、非常に貴重な資料になります>

(1)T.albaを幾つかの集団に分けて、 枯下り皆無個体に赤マークを付けておいででしたが、それの各集団内での%を知りたいです(同一系統でも植える場所が違うと、微妙に違った例も在りましたよね)

(2)T.alba以外の「種」や系統で、耐寒性に関してどうにもならない、劣悪な素材もありましたよね。これらの出所・給源も、この際明らかにしておいて下さると、有難いです 

(3)これはジャカランダについても同様です。La Pazがまだ幼苗なのに、優れた結果になっていましたが、枯死した実生があったかどうか聞き落としていました。正確な枯死株率が知りたいところです

(4)逆に、耐寒性が弱いとされるJ.cuspidifoliaに3株(?)の生き残りがありました。これはJC全体の何%だったのでしょうか? 貴重な個体ですので、これらは是非残しておいて下さい(不要なら頂戴いたします)。またJC生存株の萌芽位置とLa Pazのそれとの間に違いがあれば(JCは地際すれすれ、La Pazはかなり上から、と言った)、これも面白いです

(5)巨大になっていた(サイズが大きいだけにそれだけ耐寒性が付いているはずの)ジャカランダ(J.mimosifolia)が、見るも無残に枯下っていましたが、何個体の集団だったのでしょうか。また給源もこの際、明らかにしておいて下さると有難いです

(6)地上数10cmから萌芽したJ.puberula(?)を1株残しておられましたが、このJP集団の枯死株率は何%だったのでしょうか

お手数をおかけして申し訳ありませんが、どうか宜しくお願い致します。因みに、武岡圃場でのLa Pazの生存株率は、42/51= 82.35%(枯死株率は逆に17.65%)でした。同年齢の交配実生に比べると、遥かに良い結果でした。
 
その2.
有隅 健一                                        2016/06/13                                     
                                              
宛先: 前田 久紀              
               
 
送信日時:2016年6月13日 9:49:38
宛先:前田 久紀
 前田さん
     有隅です 

何故時々配信不能が出るのか、原因不明です。W10に機種変更したからでもないように思うのですが…… 

さて、記録の件、ご了解いただき有難うございます。
ところで1つ、大事なことを落としていました。イペーの挿木の件で、活着が終わってからでよいのですが、枝挿しと根挿し夫々の活着率と、根挿しの場合はどの程度の太さまで再生(活着)が可能なのか、最小の根径(その時の長さも)が判ると、皆さんが増殖される際に大変良いメヤスになりますので、是非総括をお願いしたいところです。

またジャカランダでは如何でしょうか。ジャカランダの場合、根挿しはあまり効かないように思っていますが…… 枝挿しも畑にいきなり挿木をやっておいでなのでしょうか。ご教示をお願い致します。
 
その3.
有隅健一
2016/06/13
                                   
宛先: 前田 久紀                  
             
              
送信日時:2016年6月13日 18:07:09
宛先:前田 久紀
               
前田さん 
      有隅です 

イペーの移植時期のことが問題になっていましたが、熱帯、亜熱帯原生の植物は充分高温になってからの移植の方が安全だとされていますので、梅雨の間でしたら何時でも良いのではないでしょうか(梅雨明け以降は、乾燥が引っ掛かりますので、大きく遅らせるわけにはいかぬと思いますが)。

その際に大事を取れば、(1)盛んに伸長している場合、少し切り下げて腋芽が動き出すまで待つ (2)この腋芽の動きを見定めてから、全葉を摘葉して・即 掘り取り移植をする――ということでは如何でしょうか。

この活動中の芽を付けておく(但し大きく突出させては不可)ことは、スムースな発根に繋がっていくと思います。










 



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