当農園のイペー達は、これまで順調に育ち、数年前からほぼ毎年開花するものが出始めていました。2009年12月に播種して樹高4m迄育ち、2012年2月3日の零下5.3℃に見舞われた年以外は毎年開花していた樹種も大打撃で根元まで枯れ下がるなど、多くの樹種に被害が出ました。
一方、枯れ下がり皆無の樹種が1種類確認できました。クリチーバ市産 T.alba「JS121117」で、24本が3.5m前後に育っています。又、播種1年目のため枯れ下がりゼロとはいかなかったものの、これを超える可能性を持つサンジョアキン市産の T.alba 2種類や、同市産の7種類約200本のT.albaも今年から試験対象に加わりました。
前田農園では過去を含めると53種類、現在22種類288本、第3圃場の幼苗407本を含めると695本のイペーを試験栽培しています(ここでの「種類」とは分類学上の「種」ではなく、木の種類という意)。
尚、有隅先生から耐寒性の調査に関して課題を頂いており、それについても最後に回答させて頂きました。
写真は根元まで枯れ下がったイペーとジャカランダ(樹高4m)
切り倒してキュウリの支柱に活用
1.調査期日 2016年6月28日2.場所 前田農園第1圃場
3.調査データ
下記添付資料参照
4.調査結果と評価
1)耐寒性最強の樹種はクリチーバ市産のT.alba、ロットNo.「JS121117」である。調査データの②④⑦⑧にあるが、合計24本全てが枯れ下がり皆無であった。健全率:100%。開花特性は、昨秋初めて1個着蕾し、春先に蕾が膨らんだが葉の繁りが優先してアボートしてしまった。柳井市では同じ親木の同級性が9本開花し、鎌倉市では同じ親木の1年後輩が2本開花した。
2)「JS121117」に続いて耐寒性が強いのは「SC131209白」(①(健全率:54%)③(健全率0%だが、枯れ下がりが10~20cmと少ない))及び「SC131207白」(③健全率0%であるが、枯れ下がりが10~20cmと少ない)である。若干の枯れ下がりが見られたが、日本の暖地では問題ない可能性がある。樹形や花の美しさで今後勝負することになる。
3)期待のサンジョアキン-1「SJ-1・1502xx」⑨は健全率:40%、サンジョアキン-2「SJ-2・150218」は健全率:①大=4%、①小=6%、⑥53%、⑩12%)である。植栽場所の条件は⑨と⑥が類似しており、まだ優劣はつけがたい。
4)T.alba以外ではクリチーバ市産のSerratifolia?「RT1506××」(⑥⑫)がダントツで、幼若でありながら合計29本中20本が枯れ下がりなしであった。⑥の健全率:55%、⑫の健全率:100%、平均69%。但し本グループは樹高15㎝程度で厳寒時に厚さ約15cmの雪の布団を被って零下9.1度の冷気を凌いだので有利だった。
その次が「C131209黒」(⑦)が21本中1本が枯れ下がりなしで、他も枯れ下がりが10~20cmで軽微であった。独立での展開やT.albaとの交配に使える可能性がある。
5)期待していたカンポスドジョルドンは根元迄枯れ下がり、耐寒性が優れてはいない。又、ポルトアレグレ市産のイペーアマレーロ2009年播種も、播種2年目から開花して4mまで成長していたが、根元まで枯れ下がるものが出るなどで増殖を断念することになる。
6)一般にイペーロッショは耐寒性が弱いが、風車小屋ロッショ「PA風1012××」は極めて耐寒性が強い。4mもので、枝の先端の枯れ下がりが5~20㎝前後のものがある。但し、個体差が大きく、根元50cmまで枯れ下がったものが1本ある。前田農園で十種類以上のイペーロショを試験栽培したが、ダントツに強い。但し、開花までの年数がかかる。
7)畑の中では耐寒性が最弱の「イペーヴェルディ」も地際まで枯れ下がったが根元からひこばえが出て、絶えることはなさそう。昨年は開花した。
8)過去に、イペーブランコは零下3度程度の寒さで小苗が数十本全滅した。
5.あとがき
昨冬の厳寒で耐寒性の有望株が見つかり、幸運であった。クリチーバ市産の樹種が全体的に耐寒性が優れている。種子は全て街路樹や公園の親木から採取されているが、市の植栽部門が地域の涼冷気候を考慮して樹種を厳選していると思われる。行政としては当該地の最低気温を想定して、その気温に耐える樹種を導入しているはずである。それを怠れば税金の無駄使いになる。イペーを植栽している行政に、最低気温を何度に想定しているかを聞いてみたいものだ。その意味でも、冷涼地であるサンジョアキン市もしっかりしている印象があり、同市からの7種類にも期待している。私が試験栽培している樹種はご協力者によってこれらの中から更に選抜されたものである。感謝に耐えない。
有隅先生からのご質問に対する回答:
<種類別、系統別の「枯下がり皆無個体の比率」や「枯死株率」を記録しておいて下さると、非常に貴重な資料になります>
A:枯れ下がり皆無個体数と母数は上記記録に明示しました。枯れ死株率はJ.cuspidifoliaを除いて、全てのグループともゼロでした。少なくともひこばえは出る状態です。
A:枯れ下がり皆無個体数と母数は上記記録に明示しました。枯れ死株率はJ.cuspidifoliaを除いて、全てのグループともゼロでした。少なくともひこばえは出る状態です。
(1)T.albaを幾つかの集団に分けて、 枯下り皆無個体に赤マークを付けておいででしたが、それの各集団内での%を知りたいです(同一系統でも植える場所が違うと、微妙に違った例も在りましたよね)
A:植えた場所毎にデータを明示致しました。
(2)T.alba以外の「種」や系統で、耐寒性に関してどうにもならない、劣悪な素材もありましたよね。これらの出所・給源も、この際明らかにしておいて下さると、有難いです
(3)これはジャカランダについても同様です。La Pazがまだ幼苗なのに、優れた結果になっていましたが、枯死した実生があったかどうか聞き落としていました。正確な枯死株率が知りたいところです
A:枯れ死した株は皆無です。期待が持てます。
(4)逆に、耐寒性が弱いとされるJ.cuspidifoliaに3株(?)の生き残りがありました。これはJC全体の何%だったのでしょうか? 貴重な個体ですので、これらは是非残しておいて下さい(不要なら頂戴いたします)。またJC生存株の萌芽位置とLa Pazのそれとの間に違いがあれば(JCは地際すれすれ、La Pazはかなり上から、と言った)、これも面白いです
(5)巨大になっていた(サイズが大きいだけにそれだけ耐寒性が付いているはずの)ジャカランダ(J.mimosifolia)が、見るも無残に枯下っていましたが、何個体の集団だったのでしょうか。また給源もこの際、明らかにしておいて下さると有難いです
A:池田さんからの初期のものです。個体名などは不明です。5mになっても開花せず今回の厳寒でダメでした。
(6)地上数10cmから萌芽したJ.puberula(?)を1株残しておられましたが、このJP集団の枯死株率は何%だったのでしょうか
A:枯れ死したものは1本もありません。全てが3~4mになっていましたが、いきなりの零下9.1℃で地際40~50cmまで枯れ下がりました。今、ひこばえが1mくらいまで10本くらい伸びています。
お手数をおかけして申し訳ありませんが、どうか宜しくお願い致します。因みに、武岡圃場でのLa Pazの生存株率は、42/51= 82.35%(枯死株率は逆に17.65%)でした。同年齢の交配実生に比べると、遥かに良い結果でした。
A:当地より温暖な有隅圃場で枯れ死が出たとは驚きです。成長の程度(播種時期)の差でしょうか。
A:当地より温暖な有隅圃場で枯れ死が出たとは驚きです。成長の程度(播種時期)の差でしょうか。
参考資料:
2016年1月25日未明の寒波の様子
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