鹿児島県知事選挙と原発問題
今回の県知事選挙の最大の争点は、県のエネルギー政策に大きく影響を与える薩摩川内市の原発問題でしょう。お二人の立候補者は、原発推進と原発反対でその立場は明確です。
私は原発問題について、選挙民が県知事選挙で正確な判断ができるような充分な情報を与えられ、知識を持っておられるのか危惧しています。原発の稼働に伴う安全性や、その休止が産業、経済に与える影響などはそれなりに議論され、マスコミでもとりあげられています。
県民にあまり知らされていない大きな課題のひとつに、廃炉後の解体廃棄物の処分問題があります。一基あたり数十万トンに及ぶであろう解体廃棄物の大半は、一般の産業廃棄物と同様に管理型や安定型の産業廃棄物として処分されたり、リサイクルされ、放射性廃棄物として管理処分されるものは数パーセントです。たとえば、年間0.01ミリシーベルト以下の放射能を帯びた廃棄物は、管理型廃棄物処分場に持ち込んでよいことになっています。 薩摩川内市の原発は1号機が1984年、2号機がその翌年に稼働を開始しており、1号機はあと12年で廃炉になります。その解体廃棄物の処分先は全く議論されていません。
今回の県知事選挙で、両候補者が原発問題全体で予測される課題を前向きに詳細に検討され、それに対する具体的な取組み方針を明確にして議論を展開されることを期待致します。
尚、6月25日、九州電力(株)に対して前田が下記の質問をして回答を待っています。-----6月28日、回答を受取り、質問内容の次に追記しました。
1号機の廃炉後の解体廃棄物の処分についてお訊ね致します。
1号機は1984年に稼働開始しており、炉命40年としますと、あと12年で廃炉になります。
①解体廃棄物の総量はどの程度ですか。
②低レベル、高レベル放射性廃棄物並びに0.01msv/年以下の産業廃棄物として処分される廃棄物の量はそれぞれどの程度ですか。又それぞれの処分先はどこを想定していますか。
③解体並びに処分費用はどの程度ですか。当然、引当金として資金準備がなされているので、明確になっていると思います。 以上
6月28日追記:
上記質問に対し、6月28日午後下記の回答がありました。
尚、薩摩川内市の原発1号機の出力は89万KWです。
お問い合わせに対する回答:
お便りBOXのご活用ありがとうございます。
ご質問にお答えいたします。
①②
110万kW級の加圧水型原子力発電所を解体した場合、約50万トンの解体廃棄物が発生すると試算されていますが、このうち「放射性廃棄物でないもの」が97%、「放射性廃棄物として扱う必要のないもの」が約2%、「放射性廃棄物」は約1%です。放射性廃棄物以外は、通常のビルの解体物などの一般の産業廃棄物と同様に扱うことができるものです。
放射性廃棄物として適切に処分する必要があるものと、普通の廃棄物として再利用や処分できるものを区分する基準を「クリアランスレベル」といいます。クリアランスレベル以下のものが、「放射性廃棄物として扱う必要のないもの」に区分されます。クリアランスレベルは、金属やコンクリートがどのように再利用または廃棄物として埋め立てられたとしても、人体への影響は無視できると国際原子力機関が認めている、1年あたり0.01ミリシーベルトの放射線量を超えないことを基準として定められています。これは、私たちが日常生活で受ける自然放射線の1/100以下です。「放射性廃棄物として扱う必要のないもの」を再利用や処分するため発電所から搬出する際には、クリアランスレベル以下であることを確認した上で、搬出します。
「低レベル放射性廃棄物」につきまして、気体状のものは、放射能を減衰させた後、測定を行い安全を確認した上で、大気に放出します。
液体状のものは、処理装置で濃縮水と蒸留水に分け、蒸留水は放射能を測定し安全を確認した後に海へ放出します。
処理された濃縮廃液は、アスファルトなどで固め、固体状のものは、焼却や圧縮により容積を減らし、ドラム缶に密閉します。これらのドラム缶は、発電所内の固体廃棄物貯蔵庫で厳重に保管します。
その後、日本原燃株式会社の低レベル放射性廃棄物埋蔵センターに搬出・埋設処分され管理されます。
「高レベル放射性廃棄物」は、30~50年間冷却のために安全に貯蔵した後、地下300メートル以上の深さの安定した地層中に最終処分されることになります。
高レベル放射性廃棄物の最終処分施設は、原子燃料サイクルの確立のために不可欠な施設であり、閣議決定された「最終処分計画」に則って、平成40年代後半の操業開始に向け、国や原子力発電環境整備機構(NUMO)による広報活動や電源立地地域対策交付金の適用等による地域振興対策など最終処分施設確保に向けた様々な取り組みが計画的に行われています。
③
110万kW級の原子力発電所の廃止に伴う費用は、解体費用として約376億円、解体に伴って発生する放射性廃棄物の処理処分費用として168億円、合計544億円と見積もられています。(平成16年価格:電気事業連合会)。
解体に伴う費用の確保策としては、昭和63年度より「原子力発電施設解体引当金」として、会計上の積立を行っています。なお、これまで解体放射性廃棄物の処理処分費用は、解体引当金の積立対象ではありませんでしたが、平成12年3月31日の省令改正により、平成12年度から処理処分費用も引当金の対象となっています。
今後とも当社事業に対しご理解とご協力をよろしくお願いたします。
以上です。
前田註記:
上記回答には、管理型産業廃棄物の約50万トンの処分費用、50万T×3万円/T=150億円や、解体完了までの設備維持管理費他約500億円、合計650億円などが含まれていません。通常、100万KWの原発の解体廃棄処分費用は約1,000億円と言われています。
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