デジタル版の報道内容(朝日新聞社に無断転載禁止):
「黄色い花を大木いっぱいにつけるブラジルの国花「イペー」。外国人が人口の2割近くを占める大泉町で、県立大泉高校がクラブ活動として試験栽培と培養実験に取り組んでいる。いずれは大量に増やして公園に植えたい考えで、生徒たちは外国人と日本人が満開のイペーをともに楽しめる日を心待ちにしている。
取り組んでいるのは、大泉高の植物バイオ研究部の1~3年生6人。実験に使う苗とタネは、イペーを日本に広める活動をしている研究家の前田久紀さん(76)=鹿児島県霧島市=と小出立彦さん(73)=神奈川県鎌倉市=から、2015年7月に提供を受けた。
苗は品種の異なる7本で、生徒らは、北風を防げて日当たりのいい校庭内の7カ所に植え、月ごとの生育状況を調べている。
調査は、寒さと北風に弱いというイペーが、寒冷地でどこまで生きられるか、日本での北限を探るのが一つの狙い。「空っ風の強い群馬でうまく育つかどうか心配だった」(小出さん)という。7本の苗のうち1本は枯死し、何本かは成長が止まっているが、2本は順調に生育。うち1本は3倍以上の高さ約2・5メートルに育った(5月24日現在)。
並行してタネの培養実験も進む。提供されたタネ10品種以上を使い、試験管の中で無菌培養中だ。ただ、タネからの培養では、イペーの形質にばらつきが出て大量増殖には向かない。タネの培養は、苗の培養に最適な培地を探すための予備実験という位置づけだ。
次にめざす本実験では、苗の先端の茎頂部を培養し無菌の苗を作り出す。イペーの大量増殖が可能となる本実験は、日本での最適種が前田さんによって特定されることが前提で、着手は来春以降となる見込みだ。
前田さんが、最適種と見込むのは、小型で黄色い花の品種。前田さんの「前」と知人の名字から「池」をとり、「池前アルバ」と呼んでいる。65種の中から探し当てたもので、今後、交配などで品種改良を重ねるつもりだという。
大泉町の久保田治男都市建設部長は「イペーの森とまではいかないが、多文化共生の象徴として、ブラジル人がイベントを開く公園に植えたい」と話す。
植物バイオ研究部でイペー研究の中心となっている3年生の喜田川代樹さん(17)と2年生の横田悠月さん(16)は「ブラジル人たちが春に咲くイペーを見て故郷を思い出し懐かしんだり、日本人と一緒に楽しんだりしてくれるといい」と話している。(長田寿夫)
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イペー ノウゼンカズラ科、学名タベブイアの通称。南米に約100種類が分布し、成長すると、高さ10~15メートルになる。2020年の東京オリンピックの記念硬貨には、前回16年の開催国ブラジルの国花の黄色いイペーとサクラがあしらわれている。
試験管でタネの培養実験に取り組む植物バイオ研究部の部員たち。
黄色い花を咲かせたイペー=前田久紀さん提供
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